

Coffee – レシピ | 2025.04.05
ハンドドリップレシピの作り方。コーヒーの味わいの変え方について
「ブリューレシオ」「グラインドサイズ(メッシュ)」「エイジング」「スワリング」etc…
コーヒー業界に携わる人や自宅でこだわってコーヒーを抽出する人なら理解できる単語たち。
これらの単語は、「ハンドドリップ レシピ」で検索をかけた時にそれなりの頻度で出現する。
正直な話、自宅で、個人で、家族間で楽しむ分には、それほどこだわらずとも美味しいコーヒーは淹れられる。品質の良いコーヒー豆を使えば細かな計測やテクニックを使わずとも”ある程度”は美味しく淹れられる。だからこそ昔の私は厳密に数値をはかる必要性を感じていなかった。
ただ、コーヒーを提供する側として働くようになり、”はかる”ことの大切さを身に染みて感じている。
80点のコーヒーを90点に、さらに95点に、とコーヒー1杯に決して安くない金額を支払う人によりよいコーヒー体験をしてもらうために相応のクオリティが必要になる。
そしてそのクオリティは先述した単語のテクニックや数値をしっかり”はかる”ことで味の再現性とともに磨かれていく。
今回は私の主観が多分に混じったハンドドリップコーヒーの味わいの組み立て方・調整方法を綴っていく。
趣味嗜好の世界であるコーヒーには正解がないと思っているので自由に楽しんでほしい。
ハンドドリップにおける風味を左右する要因
コーヒーの風味の調整を行っていくうえで、何をどう変化させると味が変わるのかは絶対に知っておかなければいけないところ。例えば、お湯の温度を高くするとどんな変化が起こるのか、粉を細かくすると何が変化するのか。
コーヒーを淹れていると、「もっとこうしたら美味しくなるのに。」なんて思うシーンはよくある。
そんなとき、風味の変動要因を理解していればその場での微調整にも役立つ。
ということで、コーヒーの味わいを変える要因を以下に書き連ねていきます。知らない用語があれば確認してみてください。
ブリューレシオ
ブリューレシオは使用するコーヒー粉に対してどれくらいのお湯を注ぐかの割合のこと。レシピとして多いのがレシオ15(コーヒー粉1に対してお湯15)程度かな。
レシオはコーヒーの濃さに多大な影響を与える。
ブリューレシオが小さいほど濃度は濃くなり、大きいほど濃度は薄くなる。

メッシュ(グラインドサイズ)
コーヒーの粉の挽き目のこと。
粉が細かいほどコーヒーの成分が移動しやすい、つまりは液体が濃くなって複雑な味わいになる。
反対に、粉が粗いほど成分が出にくくなるから軽い味わいになる。
また、飲んだ際の質感にも影響する。
粉が細かいとトロっとした粘性のある質感になるし、粗いとスルスルとのどを通るライトな質感になる。

ちなみに、コーヒーの成分には溶け出しやすい順番がある。
大まかに、酸味成分が溶け出しやすくて、次に甘み、そして苦みと続いていく。
これは味づくりにおいて、とても大事な情報。
粉が細かいと後半に溶け出す成分である甘みや苦みが出やすくなるし、粉が粗いと後半の成分が溶け出しにくいから酸味が有意な味となる。
注意点は、粉が細かいほど人にとって美味しくない味、ネガティブな味わいも出やすくなるから、いい塩梅を見極めながら調整を。
湯温
温度が高いほどコーヒーの成分がたくさん溶け出す、つまり濃いコーヒーになる。
温度が低いと成分は移動しにくいからかろやかなコーヒーになる。
先ほど記述した「コーヒーの成分が溶け出す順番」を加味すると、温度が高いと甘みや苦み成分が取り出しやすく、温度が低いと甘みや苦み成分が取り出しにくいため酸味が有意な液体になる。

抽出時間
抽出時間が長いことはつまり、粉とお湯の接触時間が長いことを意味する。接触時間が長いと成分の移動量は増え、コーヒーは濃くなる。反対に接触時間が短いと成分の移動量が少なくなり、軽い味わいになる。
抽出時間はお湯の注ぎ方で変わってくるから再現性に乏しい要因の一つ。
お湯を太く注ぐのか、細く静かに注ぐのか、中心に注ぐのか全体に注ぐのか等で違いが出るし、淹れる人の技量によってブレが生じる部分。
とはいってもある程度はコントロールする方法はある。
例えば、注湯回数を変えたり、ペーパーフィルターを変えたり、スプーンで攪拌したり、、、。
創意工夫して抽出時間をコントロールし、好みの風味を引き出してみてほしい。

他にもいろいろ
少々マニアックな話になるけど、水の硬度もコーヒーの味わいに影響を与える。マグネシウムやカルシウム、pHによって質感が変わったり苦み・酸味の現れ方が変わったり。
「カスタムウォーター」なんてものが存在するくらいなので、最高の一杯に仕上げる努力を一ミリたりとも怠りたくないならやってみるのもあり。
他には、蒸らしの時間なども影響するしグラインダーの性能(表面積の違いや粒度分布)などでも味は変動する。
と、いろいろな種類の要因を挙げたけど、すべてを網羅して完璧な1杯を、というのは難しい。
コーヒーは嗜好品の世界。人の数だけ好みが存在するから、正解も人の数だけ存在する。あまり深く考えすぎず、程よく頭を悩ませて自らの舌が喜ぶ1杯を。
調整の順序と過程、実際にやっていく
実際に私の進め方で調整してみます。
と、その前に使用する器具類は決めておくといいです。使用する器具を途中で変えてしまうと一からレシピを作り直すこともあり得るので、、、
今回は浅煎りのエチオピア、グジのナチュラルで。
瑞々しいピーチフレーバーを持つ豆なので、その特徴を引き出すように意識してレシピを調整していきます。
コーヒー豆の個性を十全に引き出すためには酸味を優位にするといいのか、苦みや甘さを優位にすればいいのか。
舌触りはライトがいいのか粘性を伴うトロっとした舌触りがいいのか。
これらの味づくりの方向性を最初に決める。
そのためにカッピングを行ったり、とりあえず一杯抽出してみて味を確認してみたり。
これから始める味づくりの羅針盤になる。
今回使用するエチオピアは、穏やかな酸味とピーチフレーバーが特徴。
なので、この段階でなんとなーく味をイメージ。
- 酸味を少し優位にしてピーチフレーバーを鮮明に感じられるようにする。
- 質感は喉をスルスルと通るくらいライトになるように調整をする。
このようにおおまかな味わいの輪郭を自分の中で定め、イメージ通りになるようこの後のレシピの数値を決定していきます。

コーヒーの濃度の大枠を決めていきます。
STEP1で決めたことに従って、スルスルと飲めるさっぱりしたコーヒーにするためにブリューレシオはちょっと数値を大きめで17にしてみます。
そして、コーヒーの出来上がりの量は200gほど欲しいので注湯量は230gとします。(抽出の際、コーヒー粉がお湯を吸うため想定の出来上がり量よりも少し多めに注湯する。)
これでレシオが17、注湯量が230gと決まったので粉量は13.5gとなります。(レシオ=注湯量/粉量)

お湯の温度、粉のメッシュ、注ぐ回数を決めます。
- お湯の温度
瑞々しい酸味をイメージしているので、苦みをあまり取り出さないよう温度は低めに設定しようと思います。
ただし、浅煎りは元々酸味成分をたくさん含んでいるので温度が低すぎると単調で主張の強い酸が出そうだなと予想し、まずは86℃で抽出してみます。

- 粉のメッシュ
個性的なピーチフレーバーを鮮明に出したいので、挽き目は中挽きより若干細かめに設定しようと思います。
とはいえ、細かくすると苦み成分も出やすくなるうえ、質感も重くなるので注意が必要です。
そのあたりのバランスは「注ぐ回数(抽出時間)」で調整してみます。

- 注ぐ回数(抽出時間)
粉のメッシュを細かめに設定したため少し苦み成分が出すぎるかな、と思っています。
なので、「注ぐ回数(抽出時間)」では苦み成分があまり取り出されないように、回数控えめに蒸らし含めて4回で抽出してみます。注ぐ回数を増やしたり、間隔を長くすると抽出時間が長くなることや粉とお湯との接触回数が増えるので甘みや苦み成分を取り出しやすくなります。
ちなみに、粉をかき混ぜるように注ぐこと(攪拌)でも味の出方は変わってきます。技量に寄る部分でもあるので調整が難しい部分といえます。

以上でコーヒーを抽出するためのレシピがほとんど出来上がりました。

まずは実際に抽出してみて味わいを確認します。
注湯レシピはお湯の抜け方を見ながら調整して以下のようになりました。
- 00:00~ 35g
- 00:30~ 80g (合計値:115g)
- 00:55~ 80g (合計値:195g)
- 01:30~ 35g (合計値:230g)
- 02:30 落ち切り
1~3では全体にお湯をしっかりかけて攪拌して抽出を促すイメージで、4では苦み・雑味を取り出しすぎないように静かに真ん中にお湯を落とすイメージで抽出してみます。
1回目ということで、抽出後に味を確認してから再度レシピを調整していくことになります。
1回目の抽出の結果、以下のように感じました。
- ウォータリー(薄くて水っぽい)に感じる
- 酸の主張が強く、成分をしっかり引き出せていない未抽出の味。
- フレーバーも弱く感じる
想定よりも成分が取り出されておらず、全体的に水っぽくて酸の主張が強い未抽出の味になりました。
なので、まずは全体的な成分量を増やして水っぽさを解消するようにレシピを調整してみます。
コーヒー粉の量を増やして(レシオを下げて)再度抽出します。

一度に複数の数値を変えてしまうと、何が原因でどのように味わいが変化したのかわかりにくいので最初のうちは一つずつ数値を変えた方がいいかな思ってます。続けていくうちに何の要因を変えれば味がどのように変わるのかが理解できるようになってきます。
2回目の抽出では以下のように感じました。
- 濃度感は好みに合ってきている
- 酸の主張が強くアンバランスな印象
- フレーバーも弱くて甘みも感じられない
ブリューレシオを調整することで好みの濃度になってきたので、次は「未抽出で酸の主張が強い」という部分を解消していきます。
甘みを引き出してバランスの良い味わいにするために、粉の粒度を細かく設定してみます。

3回目の抽出の結果、フレーバーも明確に感じられるようになり、酸の主張も穏やかで飲みやすくなりました。
とはいえ、もう少しフレーバーを強調できるような気がしています。温度を高くしてみたりドリッパーをゆすって攪拌を促すといいかも?と思います。
とはいえ、これ以上書き連ねると長くなりますし、大まかな流れは記載できたのでこの辺で。
私はこのようにしながら、レシピを微調整して完成度を高めています。
豆の種類が変われば、焙煎度が変われば、焙煎の仕方が変われば、エイジング期間が変われば、、、とその時々で風味の現れ方は変わるので淹れながら微調整して日々コーヒーを楽しんでいます。
美味しいコーヒーを淹れるための参考になっていればうれしいです。
それでは!